トラストレスに法定通貨ペッグを実現するDAIがすごい!

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USドルと価値が連動するUSDTを提供しているTether Limited社に不穏な話が上がっています。もしTether Limitedが発行しているUSDTと同額のドルを保有していなければUSDTの信頼は損なわれUSドルとのペッグが失われてしまいます。

法定通貨にペッグする仮想通貨は海外取引所でもBitcoinなどの価格が安定しない時に避難先として使える大変ありがたい通貨です。日本円にペッグするMUFGコインという仮想通貨もあります。TetherもMUFGコインもなぜ法定通貨にペッグされているかというと、TetherがTether Limited社が、MUGFコインは三菱UFJがそれぞれのコインを法定通貨と同じ値段で交換することを約束しているからです。つまり法定通貨とのペッグは特定の企業への信用の上で成り立っているわけですが、今回のように会社が担保となる法定通貨を実は持っていないなんて噂が流れると信用が下がり価格も安定しなくなってしまいます。

せっかく仮想通貨はトラストレスに実現されるのに、その価値が特定の企業を信用しないと成り立たないのは少し残念です。どうせなら全てトラストレスに法定通貨にペッグした仮想通貨を作ることはできないでしょうか?DAIはまさにそれを実現している通貨で、DAO(自立分散コミュニティ)を利用して特定の企業を信用することなくUSドルにペッグする仮想通貨を実現しています。

1月の中旬、仮想通貨全体の価格が暴落し市場が不安定になりました。そんな中DAIはUSドルとのペッグを見事に維持しており、Redditに賞賛の投稿が上がっています。

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DAIはCollateralized Debt Position(CDP)というペッグの裏付けとなる担保を管理する仕組みを使って価格を安定させます。

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DAIを理解するにはMakerというもう一つのトークンの存在への理解も不可欠です。Makerには2つの役割があり、CDPの操作で発生した手数料の支払手段として使えることとDAIの価格を安定させるDAOの投票権となることです。

What is MKR? – Makerdao – Medium

DAIはEthereum上に実現されていて、その仕組みはWhitePaperに詳しく書かれています。価格安定の仕組みを簡単に説明すると、DAIの価格が法定通貨から大きく乖離した場合、Maker保有者の投票によって目標レートを変更することで、CDPからDAIの生成コストが変化し、売り圧力や買い圧力を価格が戻る方向に与えることで目標価格に収束するようになっています。この仕組みはTarget Rate Feedback Mechanismと呼ばれています。

DAIは2017年の12月にリリースされて順調に稼働しています。
Dai is now live! – Makerdao – Medium

しかし安定なstablecoinは実現できないと主張する人もいて、今後DAIがどこまで実運用に耐えうる物になっていくのかは注意深く見守っていく必要もありそうです。